漢字と熟字訓の由来を巡る旅

漢検準1級と1級に役立つよ

66 元素  (漢検準1級と1級に役立つかな?)

 

元素

中国ではすべての元素を漢字一文字で表すことができ、周期律表も漢字で表される。現中国の漢字は略字体が多く、日本で使われる漢字とはかなり異なっているが、中国の字体を使わなくてもほぼすべての元素が揃う。

気体として存在する元素には、「气」(きがまえ)という部首を用い、金属には「金偏」、非金属には「石偏」を使うという原則がある。ただし常温で液体の元素が二つだけあり、これには「汞」(水銀:すいぎん)、「溴」(臭素:しゅうそ)と「水」「氵」が使われる。水銀は金属だが、臭素は非金属である。

水素、窒素、酸素など、日本では熟語で表現されている元素も漢字一字で表すことができる。「氢」(すいそ)は、最も軽い気体であることから「軽気」と呼ばれていたものが「氢」と書かれ、「氮」(ちっそ)は酸素を「淡く」することから「炎」が使われた。「氧」(さんそ)は呼吸や燃焼など生物にとってなくてはならない「養気」とよばれていたことから「氧」で、「氯」(えんそ)は黄緑色をしているから「氯」と書く。一般に希ガス(第18族元素)と呼ばれる元素はすべて気体として存在するが、「氦」(ヘリウム)、「氖」(ネオン)「氬」(アルゴン)、「氪」(クリプトン)、「氙」(キセノン)、「氡」(ラドン)と書くが、これらは英語やラテン語の音訳による。

非金属の元素は数少なく、「硼」(硼素:ほうそ)、「碳」(炭素:たんそ)、「硅」(珪素:けいそ)、「硫」(硫黄:いおう)、「磷」(燐:りん)などは漢字から元素を類推できるが、一方「砷」(砒素:ひそ)、硒(セレン)、「碲」(テルル)、「碘」(沃素:ようそ)のように独特の漢字を使うものもある。

金属としてまず思い浮かべるのは、通常単体でみかける金、銀、銅の類であるが、「金」「銀」「銅」や「錫」(すず)、「鉛」(なまり)などは通常使われる漢字と同じである。日本で使う漢字と異なるものには「鋅」(亜鉛:あえん)や「鉑」(白金:プラチナ)、もともと日本に漢字がないものでは「鋁」(アルミニウム)、「鈦」(チタン)、「鉻」(クロム)、「錳」(マンガン)、「鈷」(コバルト)、「鎳」(ニッケル)、などがある。

金属類ではあっても通常化合物として存在するものには、「鈉」(ナトリウム)、「鎂」(マグネシウム)、「鉀」(カリウム)、「鈣」(カルシウム)、「鋇」(バリウム)などがあり、放射性物質では「鐳」(ラジウム)、「鈾」(ウラン)、「鈈」(プルトニウム)などがよく知られた元素だろう。ただし、中国では「金偏」の漢字はすべて簡体字の「钅」を用いる。

ちなみに熟字訓では「洋銀」(ニッケル)、「満俺」(マンガン)がある。