漢字と熟字訓の由来を巡る旅

漢検準1級と1級に役立つよ

36 猛禽類  (漢検準1級と1級に役立つよ)

 

猛禽類

 猛禽類とは鋭い嘴(くちばし)と爪を持ち、他の小動物を捕食する鳥の総称で、具体的にはタカ目(タカ、ワシなどの仲間)とハヤブサ目とフクロウ目のことを指す。

タカ目にはタカ科、ミサゴ科などがあり、タカ科のうち大型のものは「鷲」(ワシ)、比較的小型のものが「鷹」(タカ)と呼ばれる。ワシ、タカと言っても特定の種の名前ではなく、ワシは「大鷲」(おおわし)、「尾白鷲」(おじろわし)、「犬鷲」(いぬわし)などの総称、タカは「蒼鷹」(おおたか)、「鷂」(はいたか)、「熊鷹」(くまたか)、「雀鷂」「雀鷹」(つみ)などの総称である。

「鷂」(はいたか)という字の左側は「遙」を意味し、大空に揺ら揺ら浮かぶ鳥を表現している。ハイタカとはもともとハイタカの雌を指す名称で、雌より体が小さく体色も異なる雄は、「兄鷂」(このり)と呼ばれていた。クマタカは後頭部に尖った冠羽を持ち、これが角を思わせることから「角鷹」(くまたか)とも書く。ツミは「雀」(すずめ)という字を使うことからわかるように日本のタカでは最も小さい。

「鳶」「鴟」(トビ)は最も馴染みの深いタカの仲間である。「ピーヒョロロー」と鳴きながら、巧みに上昇気流を利用してほとんど羽ばたくことなく悠々と飛翔する鳥で、トビの語源も「飛び」からだと言われる。「鳶」の上に付く「弋」の字は(いぐるみ)と読み、「矢に糸を付けて、鳥を射ったときに絡めて落とす仕掛け」のことである。足に長い糸をつけて飛ばせた鳥であったことから「鳶」と書いた。高いところでの作業を専門にする建築の職人も「鳶」と呼ばれるが、これは彼らが鳶口という道具を持っていたことに由来する。鳶口とは棒の先に鉄製の鳶の口のような形をした鉤のついた消火用具で、火事の際に火元や風下の家を解体するために用いられていた。木造家屋が密集し、火事も多かった江戸時代、彼らは火消し(延焼しないように家屋を壊す)の職人でもあった。

タカの仲間に「鵟」(のすり)という鳥がいる。「狂」という字を使うのは、むやみやたらと飛びまわるからで、ノスリという名は「野を擦る」ように低く飛ぶという意味である。これに対して、中くらいの高さを飛ぶことからチュウヒ(中飛)と呼ばれる鷹もいる。主に湿地帯に生息することから「沢鵟」(ちゅうひ)と書く。

ミサゴは海岸に生息するタカの仲間で、海ワシとも呼ばれる。「鶚」「雎」あるいは「雎鳩」と書く。海上を低空飛行しながら水中に飛び込んで魚を獲る鳥で、ミサゴという名も「水探る」に由来する。

「隼」(ハヤブサ)もまた独特の方法で狩をする。非常に飛翔速度の速い鳥で、語源も速翼(はやばね)が転じたものと言われる。時速300kmにも及ぶ速度で降下し、この速度で獲物となる鳥を蹴り落とす。蹴られた鳥は即死かあるいは失神状態となり、それを空中でキャッチするのである。「鶻」(はやぶさ)とも書くが、「骨」は「滑らか」を表し、滑らかにすばしこく動く鳥の意味である。