漢字と熟字訓の由来を巡る旅

漢検準1級と1級に役立つよ

31 長寿  (漢検準1級と1級に役立つよ)

 

長寿

長寿を祝う年齢には、60歳の「還暦」や70歳の「古希」に始まり、80歳には「傘寿」(サンジュ)、90歳には「卒寿」(ソツジュ)、100歳には「百寿」「上寿」(ジョウジュ)がある。この年齢を祝うのは何より限がいいからだが、傘の略字の「仐」を八十に見立て、卒の略字「卆」を九十に見立てたのは機知に富んでいる。100歳の祝いを上寿と言うのは、人の寿命の長さを上(100歳)、中(80歳)、下(60歳)に分けたことに由来する。また同じ数字の並んだ77歳、88歳、99歳にはそれぞれ、「喜寿」(キジュ)、「米寿」(ベイジュ)、「白寿」(ハクジュ)がある。喜寿は「喜」の草書体が七十七と読めることから、米寿は「米」を分解すると八十八になるから、白寿は百から一を抜いたら「白」になることによる。このほか将棋盤の目の数が81であることから81歳の祝いを「盤寿」(バンジュ)、同じく八十一を組み合わせると「半」という字になることから「半寿」(ハンジュ)と言ったりもする。

それでは、「華寿」と言えば何歳の祝いでしょう。これは「華」という字を分解していくと「十」が6つと「一」が一つできるので合わせて61、数え年での61歳つまり還暦の祝いになる(還暦という言葉があるのでほとんど使われない)。 

百を超えた祝いをできる人は今では9万人を超える。ただし、そのうち約9割を女性が占めていて、女性の強さは歴然である。「茶」という字を分解すると十、十、八十八となり、合わせて108になることから、この年齢の祝いを「茶寿」(チャジュ)という。また「皇」の字を分解して組み直せば百十一になることから111歳を祝う「皇寿」(コウジュ)という言葉もある。さらに「昔寿」(セキジュ)といって、一番上の「艹」を十ふたつに分け、下の部分を百に見立てて、合わせて120歳を祝う言葉もあるが(大還暦ともいう)、現実問題としてこの年齢を祝うことなどできるだろうか。それはともかく長生きするのはめでたいことだ。

漢字にはお年寄りの年齢を意味するものがあり、50歳を「艾」(ガイ)、60歳=「耆」(キ)、70歳=「老」(ロウ)、80歳=「耋」(テツ)、90歳=「耄」(ボウ)、100歳=「期」(キ)と表わされる(異説もあり)。90歳ともなると、人は耄(おいぼ)れ、耄(ほうけ)て、耄碌(モウロク)することになる。これらの漢字を用いた熟語には、ほかに「耆艾」(キガイ)、「耆耋」(キテツ)、「耆老」(キロウ)、「耄耋」(ボウテツ)などがあり、いずれも老人を意味する。

そうして長生きすると、「子」や「孫」は言うに及ばす、「曾孫」(ソウソン、ひまご)さらに「玄孫」(ゲンソン、やしゃご=孫の孫)の顔をも見ることができるかもしれない。しかしさらにその子供となるとほとんど出会える人はいないと思われるが、漢字には「来孫」(ライソン)、「昆孫」(コンソン)、「仍孫」(ジョウソン)、「雲孫」(ウンソン)、と8代先までの子孫を表す熟語がある。