14 ケラとカラ(キツツキ目とスズメ目) (漢検準1級と1級に役立つよ)
ケラとカラ(キツツキ目とスズメ目) (漢検準1級と1級に役立つよ)
キツツキは餌となる虫を掘り出したり、巣作りのために木をつつく。木を啄ばむ鳥なので「啄木鳥」(きつつき)である。別称ケラと呼ばれ、「啄木鳥」(けら)とも読む。キツツキという名はキツツキ目に分類される鳥の総称で、キツツキという種の鳥はいない。日本にいるキツツキの仲間は、最も小さいコゲラ、腹部の羽毛が赤いアカゲラ、山地で見かけるヤマゲラ、最大種のクマゲラなどで、それぞれ「小啄木鳥」(こげら)、「赤啄木鳥」(あかげら)、「山啄木鳥」(やまげら)、「熊啄木鳥」(くまげら)と書く。背中の羽が黄緑色をしたキツツキは「緑啄木鳥」と書いて(あおげら)と読む。
一方、鳥の中にカラと呼ばれる一群がある。コガラ、ヤマガラ、シジュウカラ、ヒガラなどで、こちらはそれぞれ「小雀」(こがら)、「山雀」(やまがら)、「四十雀」(しじゅうから)、「日雀」(ひがら)と書く。「雀」の字が使われるように、いずれも雀くらいの小さな鳥たちである。
「隹」という字はもともと小さい鳥を表す象形文字で、「旧」の旧字である「舊」(ふるい)と言う字に用いられたことから「ふるとり」と言う。小さい鳥を意味する「隹」の上にさらに「小さい」を乗せた漢字が「雀」(すずめ)であり、スズメは小さい鳥の代表である。
「囀」(さえず)る声が美しいため、日本では古くから親しまれてきたヒバリは、雀よりやや大きな鳥だが「雲雀」と書く。多くの鳥は木に停まって囀るが、ヒバリは上空を飛翔しながら囀ることから雲雀と書かれた。「告天子」と書いてもヒバリと読んで、やはり上空で囀る(告げる)様子を表しているが、もともと中国でこの字は他の鳥(日本にいない鳥)を指していたので、日本に入ってきた際に誤用されたようだ。
アトリは秋になると日本に渡ってくるスズメによく似た小さな鳥で、大きな群れになると数万から数十万匹もの集団となる。(集まる)+(鳥)からアットリ→アトリとなった。漢字で「花鶏」と書き、これはオレンジ、黒、白の羽の色をして大群で飛翔する姿を花に喩えたからだと言われる。アトリ科の鳥は英語で”フィンチ“と呼ばれ、円錐形の小さな嘴をもつのが特徴である。
アトリ科の小鳥は「鶸」(ひわ)「鷽」(うそ)、「鵤」(いかる)、「鶍」(いすか)などいずれも小さな鳴禽類(囀る鳥の仲間)である。
ヒワは「弱」(「柔らかい」の意)に「鳥」で「鶸」と書き、美しい羽をもつものが多く、漢名から「金翅雀」(ひわ)とも書く(美しい羽を持つ小さな鳥の意)。愛玩用に人気のあるカナリアもヒワの仲間である。カナリアはこれも漢名から「金糸雀」(カナリア)と書くので紛らわしい。アフリカ大陸の北西に浮かぶカナリア諸島原産の鳥である。
「鷽」(うそ)はスズメよりやや大きく、口笛のような声で囀る鳥である。名前の由来も「口笛」を表す「おそ」という言葉から来た。オスのウソには頬から喉にかけて桃色の部分があるが、メスにはないため、オスは照鷽(てりうそ)、メスは雨鷽(あめうそ)と呼ばれている。
「鵤」(いかる)の語源も諸説あるが、怒るように鳴くからだというのがわかりやすい。その鳴き声は「月、日、星」(つき、ひ、ほし)とも聞こえるために三光鳥(さんこうちょう)とも呼ばれている。「鵤」という字は角のように丈夫な嘴を持つことを示している。イカルはアトリ科の中ではやや大きめの鳥で、首の側面に斑な模様が見られることから「斑鳩」と書いて(いかる)(いかるが)と読む。
「鶍」(いすか)は上下の嘴が左右に食い違って湾曲しているのが特徴で、これはえさの松や樅の種を採取しやすくするための適応だと考えられている。交わった「喙」(くちばし)と書いて「交喙」(いすか)と読む。ここから物事が食い違って思い通りにいかないことを「鶍の嘴」(いすかのはし)という。
ヒタキ科の鳥もスズメ大の小さな鳥である。ヒタキという名は火打石をたたく音に似た声を出すことから「火焚き」となった。「鶲」あるいは「火焼」と書く。またビンズイはスズメによく似た小さな鳥で「木鶲」(びんずい)と書くがヒタキの仲間ではなく、「鶺鴒」(せきれい)科の鳥である。
ツグミはヒタキとよく似た鳥で、分類上も混同される。ほとんど鳴き声が聞かれないので、「口を噤む」ことからツグミとなった。一方たいへんよく鳴くコマドリもツグミ科の鳥で、「駒鳥」と書く。これは鳴き声が馬(駒)の声に似ているからだと言われる。そう聞こえなくもないが、たいへん可愛らしい囀り声をしており、日本三鳴鳥に選ばれている。漢名からは「知更鳥」(こまどり)と書く。