漢字と熟字訓の由来を巡る旅

漢検準1級と1級に役立つよ

48 4月の誕生石と天使の薬  (漢検準1級と1級に役立つよ)

 

4月の誕生石と天使の薬

4大宝石とは、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドのことを指す。宝石と呼ばれるためには、美しさもさることながら、その希少性や耐久性も条件となる。ルビーは紅玉、サファイアが青玉、エメラルドが緑玉と呼ばれるように、それぞれが各色を代表する宝石でもある。5大宝石となれば、ここにアレキサンドライトが加わる。アレキサンドライトはクリソベリル(金緑石)の一種で、当てる光によって色が変わる。ちなみにベリルは「緑柱石」と呼ばれ、ベリリウムを含む鉱物の1グループで、アクアマリンやエメラルド、さらに最近4月の誕生石となったピンク色のモルガナイトも含まれる(つまり緑色とは限らない)。

ダイヤモンドは宝石の王様で、自然界に存在するものの中で最も硬い物質とされてきた(最近、これより硬い鉱物が発見されている)。その名の由来もギリシャ語で「誰にも征服されない」という言葉“adamas”から来ている。和名でも「金剛石」(コンゴウセキ)と書いてダイヤモンドと読むが、「金剛」も「非常に硬くて強い」という意味である。硬い鉱物とはいうものの衝撃には弱く、ハンマーで叩けば粉々に砕けるし、またある一定方向からの力には弱いという性質があり(劈開という)、損傷しないというわけではない。ダイヤモンドは4月の誕生石だが、生まれ月に関わらず最も人気の高い宝石である。

植物では「金剛纂」と書いて(やつで)と読む。漢名由来だが、中国で「金剛纂」は違う植物を指しているので誤用のようである。天狗の羽団扇(はうちわ)と呼ばれるヤツデは、大きな葉が8つ(7~9)に裂けることから「八手」なのだが、中国語では「八角金盤」といい、この熟字でも(やつで)と読む。ウコギ科の植物で、観葉によく栽培される。

ウコギは「五加」あるいは「五加木」と書くが、これは中国で「五加」(ウーコ)と呼んでいたヒメウコギ(ウコギの一種)が、日本へ渡った際に「木」が付いて「五加木」(ウーコギ)と呼ばれるようになったためである。ウコギ科の植物には他にも、「高麗人参」、「刺楸」(ハリギリ)、「独活」(うど)、などがある。

ハリギリの枝にはたくさんの鋭い刺(とげ)があり、葉が桐に似ていることから「針桐」である。漢名からは「刺楸」と書くが、これはハリギリの葉が「楸」(ひさぎ)にも似ているため、同属と考えられていたからである。

「ウドの大木」と言う慣用句がある。ウドは高さ2~3mにも成長するものの、木ではなく草である。若芽や蕾は山菜として食されるが、大きく成長してしまうと、食用にもまた建材としても役立たない(草だから)。ここから、体ばかりが大きくて何の取り得もない人のことを指す。ウドは一本の茎がまっすぐに伸び、「風があっても揺るがず、風がなくても自ら動く」と言われたことから「独活」と書く(独りで活動するという意味)。また「土当帰」(うど)と書くこともある。「当帰」(トウキ)とは漢方において婦人病や不妊の治療に頻用されてきたセリ科の多年草である。「当(まさ)に帰る」と書くのは、子どもができないために、あるいは病弱のために実家へ帰された嫁が、この薬を服用して元気になり、「当に帰る」ことができたからという説や、夫に浮気された妻がこの薬を飲んで美しくなり、夫が「当に帰る」ようになったからという説などがある。婦人科疾患の治療になくてはならない漢方薬で、英語でも“angelica”天使を意味する。

「土当帰」は土から直接生える「当帰」のような薬効を持つ植物の意味である。「土当帰」と書いて(のだけ)とも読むのだが、ノダケはセリ科の多年草で、同じような薬効を持つことからこの字を使う。