漢字と熟字訓の由来を巡る旅

漢検準1級と1級に役立つよ

60 単位の話  (漢検準1級と1級に役立つよ)

 

単位

長さの単位メートルには、「米」という字が使われる。これに、十、百、千を付け足して、「籵」(デカメートル)、「粨」(ヘクトメートル)、「粁」(キロメートル)という国字がある。デカとは十、ヘクトは百を意味するが、デカメートル、ヘクトメートルという単位が使われることはまずないので、雑学として使われるくらいか。

同じように重さの単位、グラムは「瓦」、容量の単位リットルは「立」と書くので

「瓧」(デカグラム)、「瓸」(ヘクトグラム)、「瓩」(キログラム)、

「竍」(デカリットル)、「竡」(ヘクトリットル)、「竏」(キロリットル)

小さい方は、十分の一を「分」、百分の一を「厘」、千分の一を「毛」で表され、

「粉」(デシメートル)、「糎」(センチメートル)、「粍」(ミリメートル)

「瓰」(デシグラム)、「甅」(センチグラム)、「瓱」(ミリグラム)

「竕」(デシリットル)、「竰」(センチリットル)、「竓」(ミリリットル)となる。

重さの単位には1000kgを表す「屯」「噸」あるいは「瓲」(トン)がある。

国際単位のメートル法が使われ出してから、中国や日本で使用されていた尺貫法という単位系は使われなくなったが、ヤード・ポンド法アメリカなどでは今も健在である。

 長さの基本となるのがヤード「碼」で1ヤードは91.44cmである(この値に定められた)。

1ヤード=3フィート「呎」で、1フィート=12インチ「吋」。

長い距離にはマイル「哩」を使うが、1マイル=1760ヤードとヤード法はややこしい。

同じ長さでも海上での距離にはカイリ「海里」「浬」という単位が使われ、1浬=1852mである。この半端な数値は緯度1分(1度の60分の1)の長さに相当し、この距離を1時間で進む速さが1ノット「節」である。

重さの単位はポンドが「听」または「封」と書いて、1ポンドは約453.6g。

1ポンドの16分の1が1オンスで、「穏斯」と書く。

容量の単位は、1ガロン「呏」が約3.785リットル(イギリスでは4.546リットル)だ。

また海外の主な通貨の単位にも漢字がある。ドルは「弗」と書き、これは形が「$」に似ているための借用である。ドルの補助単位のセントには「仙」が当てられる。イギリスの通貨はポンド「磅」で、その補助単位はペンス「片」という。かつては、フランスでフラン「法」、ドイツでマルク「馬克」、オーストリアなどではシリング「志」が使われていたが、今はユーロに統一された。ただしシリングは今でも東アフリカ諸国で通貨単位として使われている。ロシアではルーブル「留」が使われる。

59 9月の誕生石と青  (漢検準1級と1級に役立つよ)

 

9月の誕生石と青

コランダム酸化アルミニウムの結晶)のうち、赤以外の色を放つ宝石はすべてサファイアと呼ばれるので、サファイアには青のほか、黄色やオレンジ、ピンク、紫の石がある。このうち青いものが最も高級とされ、9月の誕生石もブルー・サファイアである。サファイアは色に関わらず「青石」と書く。

青い花(紫ではなく)と言えば、一面に青く広がるネモフィラの花畑が昨今全国各地で人気となっている。ギリシャ語の森(ネモス)を愛する(フィレオ)に由来する名前だが、瑠璃色をした花を咲かせ、細長くて切れ込みのある葉が唐草模様のようであることから「瑠璃唐草」(るりからくさ)の和名を持つ。

「勿忘草」(わすれなぐさ)も青い可憐な花で、この名はドイツの詩人が作った物語による。恋人に花を摘もうと足を滑らせて水に落ち、命を落とした青年が、最後の力を尽くしてこの花を岸に投げ、「私を忘れないで」と言葉を残したという。ここから英語でも“forget me not”、これを日本語に訳して「忘れなぐさ」となった。

「青」の漢字を使う植物は少なく、いずれも青い花を咲かせるわけではない。

オモトは根茎が太いことから「大本」で、これが転じてオモトと呼ばれるようになった。山地に自生するユリ科の常緑多年草で、もっぱら葉の姿を鑑賞する観葉植物で、花や実を楽しむことはない。常に青々として真冬でも衰えず、生存期間が長いことから「万年青」(おもと)と書く。ここに「浜」の字が付くと「浜万年青」(はまおもと)だが、これを「浜万年青」(はまゆう)と読む。ハマユウの肉厚で長い葉がオモトによく似ていることに由来し、日当たりの良い温暖な海浜で育つので「浜」の字が付いた。ハマユウヒガンバナ科の植物で、ヒガンバナのように細い花弁をして、白い花を咲かせる。「浜木綿」とも書くのだが、ここでの「木綿」は(もめん)ではなく(ゆう)と読んで、「楮」(こうぞ)の樹皮の繊維を細かく割いて作った白い糸のことである。細くて白い花弁の様子をこの「木綿」(ゆう)に例えたのである。また漢名からは「文殊蘭」(はまゆう)と書く。

ソヨゴはモチノキ科の常緑樹で、「風に戦(そよ)ぐ木」という意味である。冬でも青々としていることから「冬青」(そよご)と書く。ちなみにモチノキという名は樹皮から「鳥黐」(とりもち)を作ることによる。モチノキ科の植物は花が小ぶりで目立たないものの、どれも真っ赤な実をつける。霜が降りる頃にこの実が色付くことから「落霜紅」と書いて(うめもどき)と読む植物がある。梅に似た葉を持つことから(ウメモドキ)=「梅擬」である。またこのウメモドキに実の姿が似ているものの、色が黒いことからクロウメモドキと呼ばれる植物もあるのだが、漢名の誤用から「鼠李」と書いて(くろうめもどき)と読む。

 

番外編 部首の話 その2 (漢検に役立つよ)

部首の話 その2

 

「いや、形がちょっとちがうやん」っていう部首。

問題1.「才」の部首は? 

「一」かな「ノ」かな。それとも「亅」(はねぼう・けつ)か。

正解は「手・扌」(て・てへん)。えっ? いや「扌」(てへん)に似てるけど、ちょっと違うやん。「ノ」の部分の跳ねる向きが逆やし、意味も「手」とは関係ないし。まあ要するに、持っていく部首がなかったから、似てるし、これでええやん的に決められた部首のようだ。

続いて、問題2.「舎」の部首は? 

これはもう「𠆢」(ひとがしら)でいいでしょう。あれ、ひょっとして「口」ってこともあるんかな? ということで、正解は「舌」。いやいや「舌」とは形が違うし、意味も関係ないし、と思うのですが、「舎」の旧字体が「舍」で、これを簡略化したのが「舎」なのだそう(全然、簡略化したようにも見えませんが)。なので「舗」の部首も「舌」ということになっている。字書によっては部首を「𠆢」にしているものもあるが、漢検では「舌」。

問題3.「承」の部首は? 

思いつくのは、「水」とか「亅」(はねぼう・けつ)という部分だが、「承」の縦棒の部分は、まっすぐな縦棒ではなくゆるくカーブをつけて描くのが普通だし、ということで正解は「手」。真ん中の部分が「手」。うーん、これもちょっと形が違うやん、と思うんですが、手を上げて承る(うけたまわる)様子からできた象形文字だそうで、そう言われればしょうがない。

問題4.「粛」の部首は?

これも、考えても出てこないでしょう、ちょっと形が違うから。

正解は「聿」(ふで)。聿(ふで)を持って、深い淵のほとりに立ち、身の引き締まるさま」を表す漢字ということだ。旧字体「肅」が、「聿」と「淵」を合わせてできた漢字だから。

 

「そんな部首があったんや」っていう部首

問題1.「高」の部首は? 

これはもう「亠」(なべぶた)でいいでしょ。あれっ、「口」ってこともあるんかな? 

正解は「高」、この漢字は「高」そのものが部首なのである。そういえば「推敲」の「敲」っていう漢字もあるからな、と思われた方は鋭いけど残念。「敲」の部首は「攴」(のぶん・ぼくづくり)でした。じゃ、じゃあ「高」を部首とする漢字ってあったっけ、と思うんですが、調べてみると「髞」「髛」「髜」などあって、まず使われることのない(はっきり言って知らなくてもいい)漢字です。

問題2.「鼓」の部首は?  はい、これも正解は「鼓」(つづみ)です。

他にも、一見他の部首に属してそうで、その漢字自体が部首となっている漢字には、「青」「赤」「黄」「白」「黒」「辛」「香」「飛」「亀」「鼻」「歯」などいくつかある。

部首というのは漢字を分類した際、どれに属するか定めたもので、字書によって多少異なる。 漢字の字書には2つの大きな権威があって、一つは後漢に編纂された最古の字書『説文解字』。これには9300以上の漢字が540の部首で分類されている。 もう一つが清の康煕帝勅撰による『康煕字典』で、収録字数はなんと47035字、部首の総数は214あり、現代使われる漢字はこの字典が土台となっている(漢検も)。

部首とは、要するに索引なので、考え方によって(字書によって)異なることがしばしばあって、どれが正しいというものでもない。字書によってはその幾つか~全てを部首として探しやすくしている場合もある。ただ、漢検で合格するためには日本漢字能力検定協会に準拠した部首を覚える必要があるので、ときに感心しながら、ときには驚きながら、楽しく勉強するのがいいと思う。

部首の話の最後に、紛らわしい部首の漢字をいくつか。全部わかれば、すごい。

問題. 以下の漢字の部首は?

1.全  2.巨  3.冬  4.次  5.台  6.去  7.主  8.年  9.唐

10.並  11.輝  12.相  13.司  14.史  15.具  16.真  17.命

 

答え

1. 入  2. 工  3.冫  4.欠  5.口  6.ム  7.丶  8.干  9.口 

10.一  11.車  12. 目  13.口  14.口  15.ハ  16.目  17.口

58 8月の誕生石とオリーブ  (漢検準1級と1級に役立つよ)

 

8月の誕生石とオリーブ

ペリドットは鮮やかな黄緑色をした透明な宝石で、8月の誕生石である。和名は「橄欖石」(カンランセキ)という。「橄欖石」の「橄欖」は緑色の実をつけるオリーブのことを指す。この実をペリドットに見立てたのである。本来「橄欖」(カンラン)とは、中国原産で熱帯から亜熱帯にかけて分布するカンラン科の常緑高木で。オリーブとは何の関係ない。オリーブが橄欖と混同されたのは、聖書を中国語に訳す際、オリーブに「橄欖」の字を当ててしまったのが始まりだと言われている。日本にもこれが誤解されたまま伝わって、「橄欖」と書いて(オリーブ)とも読む。オリーブには「阿利布」の当て字も使われる。

「乳香」(にゅうこう)と「没薬」(もつやく)は、古代エジプトの墳墓からも発掘されるほど、古くから非常に神聖な香として用いられていた。キリストの生誕の祝いに黄金と共に贈られたとして、聖書にも登場する。このどちらもがカンラン科の樹木から分泌された樹脂なのである。没薬はミルラという樹木から採るのだが、ミイラを作る際に防腐剤として使われた。このミルラがミイラの語源である。ミイラは漢名から「木乃伊」と書くが、これはアラビア語で「瀝青」(れきせい)を意味する語に漢字を当てたものとされる。瀝青とはアスファルトやコールタールなど黒色で粘性のある炭化水素化合物で、ミイラにも防腐剤として使われていたことから混同された。ちなみに「番瀝青」と書くと(ペンキ)と読む。

一方オリーブはモクセイ科の植物で、モクセイ科とはキンモクセイ、ギンモクセイのほか、ヒイラギ、ジャスミンライラックレンギョウトネリコなどの仲間である。

「柊」(ひいらぎ)は常緑の低木で、葉は外縁が鋸歯状に変形し鋭い棘がある。名前の由来も棘が刺さった際にズキズキするほど痛いという意味の「疼ぐ」(ひいらぐ)から来ており、「疼木」(ひいらぎ)とも書く。「柊」という漢字も「疼」から来るもので季節の冬とは関係ないが、冬になると白い小さな花を咲かせる。漢名からは「枸榾」(ひいらぎ)と書く。これはもと「狗骨」と書いて、樹肌の白いことが「狗の骨」のようだと表現されたことに由来し、樹木であることから「狗骨」→「枸榾」と変換されたのである。

ジャスミンは「素馨」(ソケイ)と書いて「素(しろ)くて馨(かお)りの良い花」の意味である。「素馨」には次のような逸話もある。呉代の劉穏という帝に素馨という名の美しい侍女がおり、彼女が亡くなったあと葬った墓からこの白い花が咲き、いつまでも香りを放ったという。

ライラックは「丁香花」(はしどい)の仲間で、春になると香りの高い紫をした房状の花を咲かせる。和名をムラサキハシドイと言い「紫丁香花」と書いてライラックと読む。ハシドイとは春に白い花を房状に咲かせるモクセイ科の植物で、花が枝の端に集まることから「端集い」→ハシドイになったとされる。「丁香花」と書くのは花の形が「丁香」(ちょうじ)に似ているからである。その「丁香」・「丁字」(ちょうじ)とはフトモモ科の植物で、花蕾の形が「丁」(小さな釘を表す)を思わせることに由来する。その花蕾を乾燥させたものは香辛料として、また胃腸薬として使われる。

トネリコもモクセイ科の植物で、写経の際にこの木の皮を膠状に煮て墨汁と共に練って用いたことから「共に練る濃」→トネリコとなった。また敷居の滑りをよくするためにこの木の樹蝋を溝に塗ったことから「戸塗る木」→トネリコになったという説もある。この木の皮は「秦皮」(シンピ)と呼ばれ、生薬として用いることから「秦皮」と書いても(とねりこ)と読む。「梣」という字はもともと(とねりこ)を意味する漢字で、この樹皮が「梣皮」(シンピ)である。これが音から「秦皮」に転じたようだ。「秦」は中国の地方の名前という説もある。

 

56 7月の誕生石と紅  (漢検準1級と1級に役立つよ)

 

7月の誕生石と紅

7月の誕生石、ルビーは酸化アルミニウムからなるコランダム(鋼玉)という鉱石で、ダイヤモンドに次いで硬い。コランダムに不純物として1%のクロムが入ると赤い色を発し、その赤いものがルビーと呼ばれる。「紅玉」と書いて(こうぎょく)あるいは(ルビー)と読む。

紅とは本来「紅花」(べにばな)から取れる色素で染めた色のことである。紅花はキク科の花で、花の色は黄色なのだが、この花弁を水にさらして乾かすと紅色になっていく。(くれない)と言う語は古来日本にあった藍という染料に対して、呉(中国)から来た藍=「呉藍」(くれあい)の意味である。このため紅花をわざわざ「紅藍花」(べにばな)と書くことがある。 

サフランは香辛料や生薬として知られるアヤメ科の花である。花の色は紫だが、赤く長い3本のめしべをもち、これを乾燥させたものが古来高価な香辛料、染料、生薬として用いられてきた。婦人病に用いる生薬であること、赤い染料として用いられたことが紅花と共通していることから「蕃紅花」(バンコウカ)と書き(蕃は外来の意味)、これで(サフラン)と読む。音から「洎夫藍」とも当てられる。ちなみに紅花は英語で"safflower“サフラワーといい、サフランと語源は同じである。

サルスベリミソハギ科の植物で、樹皮が常に新しいものに更新され、ツルツルと滑りやすいことから「猿滑り」の名が付いた。真夏に紅やピンクの花を咲かせるが、長い期間花を咲かせていることから「百日紅」(さるすべり)と書く。実際、百日間(約3ヶ月)は花を咲かせている。サルスベリは漢名から「紫薇」とも書く。「紫薇」(シビ)とは中国唐代の皇帝の居所のことで、その中庭にサルスベリが植えられていたことからこの字が使われるようになった。また「怕痒樹」(痒いのをおそれる樹)とも書き、これは日本でも「クスグリノキ」と呼ばれるように、ツルツルした樹肌を掻くと枝がくすぐったそうに揺れて見えるからだそうだ。

ハゲイトウヒユ科の植物で、花に目立った特徴はないが、夏から秋にかけて上部の葉が紅く(~黄色)色付く。その姿が鶏の頭のようであることから「葉鶏頭」の名が付いた。雁の渡ってくるころに色付くという意味で「雁来紅」(ガンライコウ)の異名をもち、「雁来紅」(はげいとう)とも読む。

また「紅葉」(もみじ)はカエデ科の樹木の名であるが、秋に落葉樹の葉の色が紅く色付く現象全般を指すこともある。カエデは葉が蛙の手に似ていることから「蛙手」で、これを「鶏冠」(とさか)に見立てて「鶏冠木」(かえで)とも書く。一字で「楓」「槭」の漢字もある。

「紅樹」と書けば(おひるぎ)と読む。ヒルギとは亜熱帯から熱帯地域に分布する常緑の樹木で高いものでは30mにもなる。日本ではオヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギの3種が自生する。この植物は種子が樹上で発芽し、それが海に落ち漂流し、流れ着いた場所に木が生えるという特性を持つ。ヒルギとは「漂木」という意味である(音から転じて「蛭木」と書かれる)。オヒルギという名はメヒルギよりも発芽の様子がたくましいからで、オヒルギは別名アカバヒルギと言うように紅色の花を咲かせる。それで「紅樹」(おひるぎ)なのである。とはいっても、紅いのは花弁ではなく萼が色付いたものである。マングローブとはこのヒルギ類の林のことであり、「紅樹林」と書いてマングローブと読む。

55 花の咲かない植物  (漢検準1級と1級に役立つよ)

 

花の咲かない植物

 現在の分類では、植物は大きく種子を持たないコケ植物、シダ植物と種子を作る種子植物に分けられる。種子植物の中で、胚珠(種子になる部分)がむき出しのものが裸子植物で、子房に被われているのが被子植物である。美しい花は花粉の媒介者をおびき寄せるために進化したものなので、風に花粉を媒介してもらう裸子植物には花らしい花は咲かない。人(虫)の目を引く鮮やかな花、香りの良い花、おいしい果実はすべて被子植物のものである(最も進化した植物)。昨今は遺伝子学の進歩によって植物の分類は、これまでの伝統的なもの(古いもの?)とはかなり変わってきているので、図鑑・事典によって植物の分類は多少異なる。

 コケ植物は茎と葉だけからなる最も原子的な植物で、よく知られているのはスギゴケとゼニゴケである。スギゴケは杉の枝のような茎が土から直立して密生するコケなので「杉苔」、漢名ではこれを馬の鬣(たてがみ)に喩えて「土馬騌」と書く。ゼニゴケは湿地に繁殖するコケで、破れ傘のような葉が群生する。これは銭に見立てられて「銭苔」あるいは「地銭」(ぜにごけ)である。

シダの語源は「枝垂れる」からで、漢名からは「羊歯」と書く。葉の周囲の裂片が羊の歯に似ていることに由来する。シダの一種ヤブソテツは、土から出た根茎から多数の葉が放射状に伸びる様子から「貫く」と「衆」(数が多い)とで「貫衆」(やぶそてつ)と表現された。広がった葉の形を鳳凰の尾に見立てて、「鳳尾草」(ほうびそう)とも呼ばれる。

イワヒバは何の肥料もないような岩場に生えるシダで、その葉がヒバに似ていることから「岩檜葉」である。漢名からは「巻柏」(いわひば)と書いて、葉の形がやや巻いていることと、常緑樹を表す「柏」を用いて表している。シノブグサも土のない何の栄養もないような場所に生えることから耐え忍ぶ→「忍ぶ草」と呼ばれ、垣根や屋根や石の上でそれらを覆った衣のようにも見えることから「垣衣」(しのぶぐさ)と書かれた。

またシダ類にはトクサの仲間も含まれる。トクサとは茎の表面が非常に固くザラザラした植物で、乾燥させたものは「砥石」のように研磨に用いられてきた。「砥ぐ草」から「砥草」(とくさ)である。木をも磨くことから、木にとっての賊という意味で「木賊」(とくさ)とも書く。トクサと言えばツクシ・スギナもトクサの仲間である。「ツクシ誰の子スギナの子」と童謡で歌われるようにツクシとスギナは同一の植物である。一つの根茎から胞子を作るために伸びるの(胞子茎)がツクシで、栄養を取るために葉をつけるの(栄養茎)がスギナである。ツクシは筆の形に見えることから「土筆」あるいは「筆頭菜」と書き、スギナは葉が杉に似ていることから「杉菜」である。スギナは節のところで抜いても継ぐことができることから「継ぐ菜」を語源とする説もあり、「接続草」(つぎな)とも書く。これを乾燥させたものは「問荊」(モンケイ)という生薬になるので、「問荊」(すぎな)とも読む。

 裸子植物はソテツ、イチョウとマツなどの針葉樹類に分けられる。

 イチョウ中生代に世界中に繁栄した植物で、現存しているのはただ一種のみとなった生きている化石である。その実の形が杏に似て銀白色をしていることから「銀杏」と書いてイチョウと読む。また鴨の足のような形をした葉に因んで「鴨脚樹」(いちょう)、また公(爺)が種を植えても実が生るのは孫の代になってからとの意味で「公孫樹」(いちょう)とも書く。

 マツやヒノキに代表される針葉樹はすべて裸子植物で、そのほとんどが常緑樹である。マツの中で唯一常緑でなく落葉するのがカラマツで、「落葉松」(からまつ)と書く。

また針葉樹の中に「一位」(いちい)という尊大な名を持つ植物がある。儀式のとき高官が持つ笏という板を作るのに用いられ、位階の正一位従一位に縁が深いということから「一位」と名づけられた。材は日本の木材の中でずばぬけて赤く、「赤檮」(いちい)と書くのは赤い切り株の意味である。

番外編 部首の話 その1  (漢検に役立つよ)

 

部首は、字書によって多少の違いがあるのだが、ここでは漢検に準拠したお話。

 

「あっ、そこなん?」っていう部首

問題1. 「黙」の部首は? 

これはもう「灬」(れっか、れんが)でしょう。いや、問題に出すくらいだから、ひっかけで「里」(さと)かな、もしかしたら「犬」(いぬ)ってこともあるのかな、と思うかもしれませんが、正解は「黒」(くろ)でした。「あっ、そこなん?」って思いませんか。まあ、意味を考えると「黒」が合っているのかもしれませんが。

では、気を取り直して、問題2. 「率」の部首は? 

これは「亠」(なべぶた)しかないでしょ。あれっ「十」の可能性もあるんかな、まさか意表をついて「幺」(いとがしら)なんてことも? と考えるのが普通だと思う。正解は「玄」でした。「玄」は細い糸を表していて、それが左右に散らばるのを「十」でまとめる様子を意味しているのだそうだ。字書によっては、「亠」としているものもあって、「十」も含めて、3つの部首をOKとすることもあるようだが、意味からするとやはり「玄」でいい(漢検でも「玄」)。

問題3.「幸」の部首は? 

「土」辺りが妥当かな? 

正解は「干」でした。この「干」という部首に特別な意味はなく、単に字形を分類するための部首とのこと。まあ、そうならそう覚えておくしかない。

ならば、問題4.「報」の部首は? 

これはもう簡単、さっきの「幸」のことを考えれば「干」しかないでしょ。と思ったら、正解は「土」。何で?? そもそも土とは関係ないし、だったら「干」でよくない? ちなみに「執」の部首も「土」となっている。ならば「幸」の部首も「土」にした方がすっきりしないか?

続いて、問題5.「垂」の部首は? 

この漢字は、土に実った穂が垂れている様子から作られた漢字とのことで、正解は「土」。確かに「土」という字が含まれている。

では、問題6.「乗」の部首は? 

この漢字は、木にまたがって上る人を描いた象形文字だということだ。ならば「木」に間違いないでしょう、さっきの「垂」の例もあるし、と思ったら、なんと「ノ」(の・のかんむり・へつ・へち)。「ノ」という形を表すだけの意味のない部首でした。「木」でええやん、と思う。

最後に、問題7.「奉」の部首は?

どこに部首らしきものがあるのか。下の部分の「キ」みたいな部首はないし、「三」という部首もなく、もしかして「人」? 正解は「大」でした。ああ、そこなんや。ちなみに「奏」の部首も「大」。なるほど、パターンが読めたぞと思っていたら、「春」の部首は「日」で、「泰」の部首は「水」でした。

 

「えっ、そっちなん?」っていう部首。

問題1.「酒」の部首は? 

小学校3年生で習う漢字、そんなに難しくもない。水に関係するのが「氵」(さんずい)だと習ったし、もうこれは「氵」でしょ? 残念ながら正解は旁の方の「酉」(さけのとり、ひよみのとり)。これに関してはどの字書も「氵」でもいいとは言ってくれない。十二支の十番目「とり」に使われる文字だから「日読みの“とり”」で、口の細い酒壺を描いた象形文字なので、酒に関する漢字に用いられる部首。

問題2.「初」の部首はどっち? 「衤」(ころもへん)なのか、「刀」なのか。

この漢字の意味はというと、「衣料に対して、最初にはさみを入れて切ること」となっている。意味を考えても、どっちが部首でもええやん、と思うのだが、正解は「刀」の方でした。

問題3.「巡」の部首はどっち? 「辶」(しんにょう)なのか「巛」(まがりかわ)なのか。

普通に考えると「辶」(しんにょう)でしょうね。「巛」(まがりかわ)なんて部首、聞いたこともないし、意味を考えても「辶」で何ら問題ないし。けど、正解は「巛」。いやいやこんな部首、わざわざ使わんでもええやん。だって「巛」を使う他の漢字「災」の部首は「火」、「甾」(漢検配当外)の部首も「田」、なんで「巡」だけのために「巛」などという部首を?