漢字と熟字訓の由来を巡る旅

漢検準1級と1級に役立つよ

56 7月の誕生石と紅  (漢検準1級と1級に役立つよ)

 

7月の誕生石と紅

7月の誕生石、ルビーは酸化アルミニウムからなるコランダム(鋼玉)という鉱石で、ダイヤモンドに次いで硬い。コランダムに不純物として1%のクロムが入ると赤い色を発し、その赤いものがルビーと呼ばれる。「紅玉」と書いて(こうぎょく)あるいは(ルビー)と読む。

紅とは本来「紅花」(べにばな)から取れる色素で染めた色のことである。紅花はキク科の花で、花の色は黄色なのだが、この花弁を水にさらして乾かすと紅色になっていく。(くれない)と言う語は古来日本にあった藍という染料に対して、呉(中国)から来た藍=「呉藍」(くれあい)の意味である。このため紅花をわざわざ「紅藍花」(べにばな)と書くことがある。 

サフランは香辛料や生薬として知られるアヤメ科の花である。花の色は紫だが、赤く長い3本のめしべをもち、これを乾燥させたものが古来高価な香辛料、染料、生薬として用いられてきた。婦人病に用いる生薬であること、赤い染料として用いられたことが紅花と共通していることから「蕃紅花」(バンコウカ)と書き(蕃は外来の意味)、これで(サフラン)と読む。音から「洎夫藍」とも当てられる。ちなみに紅花は英語で"safflower“サフラワーといい、サフランと語源は同じである。

サルスベリミソハギ科の植物で、樹皮が常に新しいものに更新され、ツルツルと滑りやすいことから「猿滑り」の名が付いた。真夏に紅やピンクの花を咲かせるが、長い期間花を咲かせていることから「百日紅」(さるすべり)と書く。実際、百日間(約3ヶ月)は花を咲かせている。サルスベリは漢名から「紫薇」とも書く。「紫薇」(シビ)とは中国唐代の皇帝の居所のことで、その中庭にサルスベリが植えられていたことからこの字が使われるようになった。また「怕痒樹」(痒いのをおそれる樹)とも書き、これは日本でも「クスグリノキ」と呼ばれるように、ツルツルした樹肌を掻くと枝がくすぐったそうに揺れて見えるからだそうだ。

ハゲイトウヒユ科の植物で、花に目立った特徴はないが、夏から秋にかけて上部の葉が紅く(~黄色)色付く。その姿が鶏の頭のようであることから「葉鶏頭」の名が付いた。雁の渡ってくるころに色付くという意味で「雁来紅」(ガンライコウ)の異名をもち、「雁来紅」(はげいとう)とも読む。

また「紅葉」(もみじ)はカエデ科の樹木の名であるが、秋に落葉樹の葉の色が紅く色付く現象全般を指すこともある。カエデは葉が蛙の手に似ていることから「蛙手」で、これを「鶏冠」(とさか)に見立てて「鶏冠木」(かえで)とも書く。一字で「楓」「槭」の漢字もある。

「紅樹」と書けば(おひるぎ)と読む。ヒルギとは亜熱帯から熱帯地域に分布する常緑の樹木で高いものでは30mにもなる。日本ではオヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギの3種が自生する。この植物は種子が樹上で発芽し、それが海に落ち漂流し、流れ着いた場所に木が生えるという特性を持つ。ヒルギとは「漂木」という意味である(音から転じて「蛭木」と書かれる)。オヒルギという名はメヒルギよりも発芽の様子がたくましいからで、オヒルギは別名アカバヒルギと言うように紅色の花を咲かせる。それで「紅樹」(おひるぎ)なのである。とはいっても、紅いのは花弁ではなく萼が色付いたものである。マングローブとはこのヒルギ類の林のことであり、「紅樹林」と書いてマングローブと読む。