漢字と熟字訓の由来を巡る旅

漢検準1級と1級に役立つよ

44 赤いスイートピー  (漢検準1級と1級に役立つよ)

 

赤いスイートピー (マメ科

マメ科の植物は花も木も多種多様で多くの種を含むが、種子が莢に覆われているのが最大の特徴である。一般に根に根粒菌という細菌を持ち、これが空気中の窒素を植物が使いやすい硝酸塩に変換してくれるため、やせた土地でも育つものが多い。

マメと言えば、大豆、「小豆」(あずき)、「豌豆」(えんどう)、「蚕豆」(そらまめ)、落花生など、植物性蛋白の重要な供給源で、食用としてはイネ科の次に人類に欠かせない植物である。ソラマメは莢が空に向かって生えることから「空豆」というのが語源で、莢の形が蚕(かいこ)に似るために「蚕豆」と書く。また花の形が藤のようであることからフジマメと呼ばれる豆があるが、模様が鵲(かささぎ)の羽に似ていることから「鵲豆」(ふじまめ)と書く。

莢が上を向いて生え始め、物を捧げるときの手の形に似ているためにササゲと呼ばれる豆があり、豆が角ばっているので「大角豆」(ささげ)と書く。また「豇豆」(ささげ)とも書いて、「豇」が「紅」に通じて紅い豆だからである。赤飯を作る際には、小豆は皮が薄く破れやすいので(武士社会では切腹を思わせた)、代わりに皮の丈夫なササゲが用いられる。

また「隠元豆」(いんげんまめ)は江戸初期に明から渡来した隠元という禅僧が持ち込んだことに由来する。莢を眉に見立てて「眉豆」「眉児豆」や、煮てよく惣菜に用いることから「菜豆」と書いても(いんげんまめ)と読む。

スイートピーマメ科の花で、甘い芳香を放つことから"sweet“(甘い)+"pea”(えんどう)である。赤、白、ピンク、紫など蝶形の可憐な花を咲かせ、もっぱら観賞用だが、マメ科である証拠に種子は莢に包まれる。その特徴から漢字では「花豌豆」「麝香豌豆」と書く。

4枚葉のものを見つけると幸福になれるというクローバーも、マメ科の植物である。馬の肥やし(飼料)となることから「馬肥草」(クローバー)と書く。またマメ科にはそのままウマゴヤシという名の植物もあり、漢名から「苜蓿」(うまごやし)と書く。「苜蓿」(モクシュク)と書くのは古代イラン語の音訳だそうである。

イカチは枝に鋭い棘を持つ、「蛇結荊」(ジャケツイバラ)の仲間である。漢字では「皁莢」(ソウキョウ)と書く。「皁」という字は、部首が「白」でありながら(くろ)(くろい)と読む意外な漢字で、皁い莢になることから「皁莢」(さいかち)である。「皂莢」あるいは「皀莢」とも書かれるが、「皂」は「皁」の俗字なので同じ意味を持つ。「皀」は字体が似ているために混同されたもので、「皀」には(ソウ)の読みはない。

ネムノキの葉は、日が当たると開き、夜になると閉じて眠ったように見えることから(睡眠運動)、「眠の木」が語源である。中国では夜、葉が合わさる様子を、男女が床を共にすることを想像して「合歓」(ねむ)と書いた。合わさって歓ぶという意味である。アカシアはネムノキに近縁で、花が輝くように黄色いことから「金合歓」と書いて(アカシア)である。同じくネムノキ科のオジギソウも睡眠運動をするが、葉が非常に敏感で触れただけでも葉を閉じる。この動きを日本ではお辞儀をしているように捉え、漢名からは羞らう姿に見立てたことから「含羞草」(おじぎそう)と書く。