漢字と熟字訓の由来を巡る旅

漢検準1級と1級に役立つよ

11 ナスとジャガイモ  (漢検準1級と1級に役立つよ)


ナスとジャガイモ(ナス科)

ナス科とヒルガオ科とは兄弟のようなものであるが(同じナス目)、ナス科の植物はヒルガオ科と違って花よりもその実で知られた存在である。「茄子」(ナス)はもとより、トマトにピーマン、ジャガイモなどがナス科に属する。トマトはナスの仲間であるから、「赤茄子」と書いたり、「番茄」「蕃茄」(バンカ)と書かれたりする。「番」「蕃」は「外国からの」という意味である。その一方で瓜の仲間と勘違いもされたようで「小金瓜」と書いてもトマトと読む。

トウガラシは「唐辛子」と書くほか、「蕃椒」の字も当てられる。「椒」(しょう)は辛味を意味する漢字である。「蕃」はやはり「外国からの」の意味であり、トマト、ピーマン、トウガラシやジャガイモはいずれも海の向こうの遠い外国、南アメリカ原産なのである

ピーマンはトウガラシの一種であって、ピーマンという語はもともとフランス語で唐辛子のことを指す。漢字では「青椒」と書き、中国語ではこれを「チンジャオ」と読む。ピーマンと豚肉の細切り炒め「チンジャオロースー」の「青椒」である。

「椒」を(はじかみ)と読めば「山椒」(さんしょう)を意味する。サンショウとはミカン科の低木で、葉や果実に特有の芳香と辛さを持ち合わすため、古くから日本を代表する香辛料として用いられてきた。「蜀椒」と書いても(サンショウ)あるいは(なるはじかみ)と読む。同じ(はじかみ)でも「薑」と書けば「生姜」「生薑」(しょうが)のことを指し、根茎を香辛料として食用にするショウガ科の植物である。これと区別するために山椒の方を「結実するはじかみ」の意味で(なるはじかみ)と呼んだ。

ホオズキもナス科の植物で、実が生る様はプチトマトに似ている。食用、薬用、観賞用にされるほか、中身を出して口で吹くこどもの遊びにも用いられてきた。名前の由来は、この遊びで子どもが頬を突き出すことから「頬突き」とする説、頬が赤く色付くことから「頬付き」とする説など諸説ある。昔から夏になると各地でほおずき市が開かれるほど、日本人には親しまれてきた植物である。「酸漿」(ほおずき)と書くのは食べると甘酸っぱい味がすることからである。また「鬼灯」とも書くが、これは中国語で小さな赤い提灯を意味する。実の垂れ下がる様子はまさに小さな提灯のようでもある。

ジャガイモはサツマイモとともに芋の代表的存在だが、サツマイモが塊根といって根が肥大したものなのに対し、ジャガイモは塊茎という地下に潜った茎が肥大したものである。ジャガイモは馬につける鈴の形に似ていることから「馬鈴薯」(バレイショ)とも呼ばれる(これは誤用だとする説もある)。

この他、昨今肩身の狭い思いをしているタバコもナス科の植物だ。通常「煙草」と書くが、漢字一字で「莨」(たばこ)という漢字もある。